準備書面(4)3.まとめ
2006 / 07 / 15 ( Sat )
3.まとめ
以上見てきたように、おおよそ被告国等の陳述は詭弁と欺瞞に満ちた、原告のみならず裁判所をも愚弄するものである。

このような陳述を恥ずかしげもなくすることができるのは、被告国等が婚外子について人権享有主体であるとはまったく考えないばかりでなく、人権を蹂躙されて当然の被差別者であると規定しているからである。

また、詭弁と欺瞞に満ちた主張を平然と行うのは、どのような陳述をしても、司法は行政に追随する判決を下すであろうという、司法に対する侮りを表したものでもある。

「私生子と云う名称に対しまして、之に代る所の名称を以てしまする時、には、其名称如何美なりとも之を慣用する結果は又同じく面白からざる名称に変化する訳でありますから」と、1925(大正14)年1月21日の臨時法制審議会で述べられているように、敗戦後の国会で創作された「嫡出でない子」という語もまた「面白からざる名称」に変化した。

第1回 - 参議院 - 司法委員会 - 20号 昭和22年08月29日
○政府委員(奧野健一君)
次に七百七十九條、ここでちよつと御注意申したいのでありますが、現行法で「第二款嫡定ニ非サル子」というような見出しがあり、それから「庶子」という字が現在の八百二十七條の第二項にあるのでありますが、この庶子という言葉は余り適当でないので、即ち「庶子」という文字は削除いたしたのであります。すでに「私生子」という字はなくなつて、「庶子」という言葉だけが残つておりましたが、子の名誉のために庶子という言葉も今回無くなしたのであります。ただ「嫡出の子」と「嫡出でない子」という二つだけあるのでありますが、嫡出でない子というのも実は余り賛成しないのでありますが、それは止むを得ないと考えまして、「嫡出でない子」というのを使いますが、「庶子」、「私生子」というのは廃めたわけであります。そこで七百七十九條は現在の八百二十七條の第一項に該当するわけであります。第二項は今申しましたように「庶子」という言葉をなくしたわけであります。

「男・女」という続柄差別記載は、被告国自らが、「実は余り賛成しない」という「嫡出でない子」ということを、「この区分を正確かつ明瞭に公示するため」(被告準備書面(2)5頁)のものである。しかも、続柄を差別記載することは戸籍法によって求められているのではなく、法務省が規則附録6号戸籍の記載のひな形によって、独自に制定したにしか過ぎない。その上、「男・女」という記載が性別にしか過ぎず、親族関係を表す続柄として相応しくないことを自ら認めている。そして、2004(平成16)年11月1日に「男・女」という続柄差別記載は人権上の問題があるので消除されている。(原告準備書面(1)21〜23頁参照)

しかし、国は「申し出」をしても、婚外子の関連する戸籍に「男・女」という続柄差別記載を維持するという通達を発出した。その目的は、すでに原告が以下のように陳述した通りである。

被告国等は婚外子の基本的人権を法と行政慣行等のあらゆる局面で蹂躙することによって、婚外子は社会関係の全ての局面で差別されて当然であるとの国としての規範を示してきた。その結果社会一般に婚外子に対する差別意識が醸成され、またその意識を国は立法の根拠としてきた。国民が持つように仕向けられた差別意識を立法の根拠とすることによって、立法不作為、国際法違反等の責任を国民の意識に転嫁してきたのである。(原告準備書面(1)28頁)

一方従来から、被告国は批准した国際条約について、以下のようなふざけた国会答弁を繰り返している。

第126 回- 衆議院- 外務委員会 - 7号  平成05年05月11日
○岡光 民雄君(法務省民事局参事官)
私の方からは、(こどもの権利条約について)相続分の問題、それから婚姻年齢の問題、この二つの問題をお答えさせていただきたいと思います。
 相続の問題は、確かに嫡出子と嫡出でない子と相続分に違いを設けてございます。嫡出でない子は嫡出子の相続分の半分、こういうふうな規定が民法にあるわけでございますが、ただ、相続の問題というのは親と子の問題でありまして、子供が児童であるかどうかにかかわらないわけでございまして、六十の方がお亡くなりになって三十の方が相続される場合でもそういうことが起きるわけですから、児童の固有の問題ではないとは思っておりますけれども、

第162回 - 衆議院 – 法務委員会 – 8号 平成17年03月30日
○南野国務大臣 締約国の責任というのは先ほど申し上げたとおりでございますので、条約の締約国として責任を果たしていないということではないということで、これは差別ではないということでございます。
 条約委員会の最終見解に反しているとも言えません。それは、条約委員会の最終見解がもっともなものであれば、法的拘束力を有するものではないとしても、これに従うことも検討しなければならないと思いますけれども、嫡出でない子の相続分に対する最終見解ということが条約に対する理解を誤っていると考えておりますので、その最終見解を受けて民法改正をする必要もないというふうに思っております。
「最終見解ということが条約に対する理解を誤っている」すなわち国連規約委員会が条約の解釈を誤っているという答弁を行っている。(原告準備書面(2)54〜56頁参照)

「子どもの権利条約」は、基本的人権が子どもにも保障されるべきことを国際的に定めた条約であり、1989(昭和64)年国連総会で採択され、日本は1994(平成6)年に批准し、国連の条約の中でも最多の192ヶ国が批准している。
 その本旨は、子どもを「保護する対象」とだけ見るのではなく、「育つ主体」としての子どもの人権を重視することにある。

「本件規定(婚外子相続分差別)の定める差別がいかなる結果を招いているかをも考慮すべきである。双方ともある人の子である事実に差異がないのに、法律は、一方は他方の半分の権利しかないと明言する。その理由は、法律婚関係にない男女の間に生まれたことだけである。非嫡出子は、古くから劣位者として扱われてきたが、法律婚が制度として採用されると、非嫡出子は一層日陰者とみなされ白眼視されるに至った。現実に就学、就職や結婚などで許し難い差別的取扱いを受けている例がしばしば報じられている。本件規定の本来の立法目的が、かかる不当な結果に向けられたものでないことはもちろんであるけれども、依然我が国においては、非嫡出子を劣位者であるとみなす感情が強い。本件規定は、この風潮に追随しているとも、またその理由付けとして利用されているともみられるのである。
こうした差別的風潮が、非嫡出子の人格形成に多大の影響を与えることは明白である。我々の目指す社会は、人が個人として尊重され、自己決定権に基づき人格の完成に努力し、その持てる才能を最大限に発揮できる社会である。人格形成の途上にある幼年のころから、半人前の人間である、社会の日陰者であるとして取り扱われていれば、果たして円満な人格が形成されるであろうか。少なくとも、そのための大きな阻害要因となることは疑いを入れない。こうした社会の負の要因を取り除くため常に努力しなければ、よりよい社会の達成は望むべくもない。憲法が個人の尊重を唱え、法の下の平等を定めながら、非嫡出子の精神的成長に悪影響を及ぼす差別的処遇を助長し、その正当化の一因となり得る本件規定を存続させることは、余りにも大きい矛盾である。」(1995(平成7)年7月5日 大法廷・決定 平成3(ク)143 遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告)と判示されていることからも明らかなように、婚外子相続分差別は子どもの権利条約によって保証された「育つ主体」としての子ども「婚外子」の人権を侵害しているのである。

国連女子差別撤廃委員会第29回会期 日本国報告・審査(2003年)では、35.委員会は、また、戸籍、相続権に関する法や行政措置における婚外子に対する差別及びその結果としての女性への重大な影響に懸念を有する。
という勧告が下されている。

これは、「婚外子」差別の結果として「婚外子」と親権者・養育者としてシングルマザーが重大な苦境に立たされること、またそれを目の当たりにした女性が望まない妊娠中絶に追いこまれることなどを指摘しているのである。

これはまた、法律婚によらずに出産した子を「嫡出ではない」とすることは、女性の妊娠し、出産するという絶対的人権に対する侵害であることを示す勧告である。

ところが、被告国は国としての条約の解釈にあたって
「相続の問題というのは親と子の問題でありまして、子供が児童であるかどうかにかかわらないわけでございまして、六十の方がお亡くなりになって三十の方が相続される場合でもそういうことが起きるわけですから、児童の固有の問題ではない」
「男女において相続分に差異を設けるものではないことから、男女の平等の理念に反するものではなく、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(昭和六十年条約第七号)に違反するものではない」
を正解とするという破廉恥極まりない国会答弁を行っているのである。

被告国は、「憲法 第98条 2項 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」を無視する、この国会答弁を維持したいのなら、国連において上記の条約解釈を開陳し、日本国審査に臨めばよいのである。

しかしながら、日本国がかかる条約解釈を行えば、国連人権理事会において一蹴されるばかりでなく、日本国の国際条約を誠実に遵守しようとする精神について、国際社会において疑いの念を抱かせるのは火を見るよりも明らかである。

戦後日本の国際社会への復帰は、大日本帝国が戦争を遂行する過程で犯した、いわゆる戦争犯罪について、国際条約違反であることを受け入れることを前提として許されたものである。
それ故に、日本が国際条約の締結国としての義務を誠実に果たそうとするか否かは、日本国の存続に関わる問題である。

被告国は上記のふざけた国会答弁を繰り返すことで、婚外子の人権などはまともな議論の対象ではなく、欺瞞的な切り返しで居直っていればすむ問題だという見解を示したのである。このような被告国の態度は、婚外子に対する社会的差別を助長するものでもある。

裁判所におかれては、被告国等の原告と裁判所を愚弄するばかりでなく、「最終見解ということが条約に対する理解を誤っている」などという国連条約委員会のみならず、引いては国連を中心に結集する国際社会をも愚弄する態度、認識を排斥し、原告に対して損害賠償を認める判決を下されることを求めるものである。

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原告側 準備書面(3)
2006 / 05 / 11 ( Thu )
原告側 準備書面(3)

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第1 3008号通達の対象について
第2 パブリックコメントについて
第3 推定されない嫡出子について
第4 判決の理解について
第5 公共の福祉について
第6 まとめ
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原告側 準備書面(2)
2005 / 11 / 26 ( Sat )
原告側 準備書面(2)

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・はじめに/第1 「第4 3008号通達の対象について」について
  その1
  その2・その3
  小括
第2 被告国等の婚外子差別を正当化する感覚とその結果
第3 婚外子続柄差別記載について
第4 民法と戸籍について
第5 婚姻届について
第6 出生届について
第7 婚外子の名誉について
・第8 判決の理解について
  その1 最高裁平成7年7月5日大法廷決定について
  その2 いわゆる住民票続柄裁判について
  その3 いわゆる戸籍続柄裁判について
  その4 国際条約について
  その5 プライバシーについて
第9 まとめ
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