控訴審準備書面(1)
2007 / 03 / 24 ( Sat )
第一 婚外子差別の違憲性について

日本国憲法には、

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 

第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

第24条 2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

として、立法権はもとより行政、司法等の国政の限界を示す明文の規定がある。
裁判所が司法審査をするにあたっては、最高法規である憲法の明文規定によらねばならないのは、自明のことである。憲法に組み込まれた人権は最高規範性を有し、憲法の特質としてその名宛人は公権力である。これは、我が国が政府の権力をより次元の高いルール(憲法)で制約するという立憲主義をとっているからである。当然にも、行政裁量もこの限界によって制限されているのである。

このことは、「嫡出・非嫡出区分の憲法適合性」(同志社大学法学部教授 釜田泰介 同志社法学 五十七卷三号 2005年9月)(甲第47号証)で、以下の如く論じられているところである。

憲法13条の個人尊重の原則、14条平等の原則からは、立法、行政、司法における公的判断は、全ての個人との間で正確でなければならないのである。公的判断形成に際して行政が使用してはならない基準が憲法において明文で示されているのである。すなわち、公的判断形成にあたっては、個人は人種、性別、社会的身分等の何らかの集団の一員として評価されてはならないのである。また、公権力の行使に際しては、正確な個別判断を可能にする適正手続きを履行しなければならないのである。

また、日本国憲法は、

第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。 

第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。 

第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

憲法は、全ての国民に「侵すことのできない永久の権利として基本的人権」を保障し、憲法に違反する「法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為」を無効としている。そして、公務員に憲法擁護義務を負わせている。すなわち、行政裁量において、公務員は憲法擁護義務を負っているのである。

日本国憲法の下では、婚外子という社会的身分に基づく差別は明文で禁止されている。しかし、国は婚外子に対して戸籍続柄差別記載を行い、「婚外子は、(中略)就学、就職及び結婚等の社会関係において今なお看過し難い不利益な取扱いを受けているところ、社会生活においては、多くの場面において戸籍の謄本の提出が求められることがあり、その戸籍の記載によって婚外子であることが判明し、差別等が助長されることが認められる。」(平成11年(ワ)第26105号 東京地方裁判所平成16年3月2日判決)という事態を招いた。

また、婚外子当事者は「男・女」という、嫡出子とは別異の屈辱的続柄を公的書類に記述することを強制されてきたのである。このことによる、精神的苦痛は計り知れない。

2004(平成16)年11月1日に続柄差別を撤廃したとされるが、法務省は従前の戸籍の更正を拒否するという憲法擁護義務を逸脱する通達を発出した。このような通達の発出は、国が婚外子の人権をないがしろにしても差し支えないとしているからこそできることである。これは、国による婚外子に対する新たな侮辱であり、この通達によって当事者の精神的苦痛は倍加したのである。

実際に、現行の除籍されていない戸籍の続柄のみを更正したとしても、従前の戸籍が自己の証明として要求されるという現実がある。例えば、外国人と婚姻しようとする時である。

ドイツへようこそ!  ドイツ人との結婚に必要な書類
http://www.tokyo.diplo.de/Vertretung/tokyo/ja/01/Seite__ehesachen.html
I. ドイツで結婚する場合

(1) 戸籍謄本(抄本でもよいが謄本の方がよい)

(2) 婚姻要件具備証明書(Ehefähigkeitszeugnis)

(3) 住民票(ドイツの戸籍役場−Standesamt−によっては提出を求められる)

注:離婚歴がある場合、前の結婚及び離婚の記載された戸籍謄本を用意し、その離婚がドイツ法に基づいても有効な離婚であることを、ドイツの法務当局に確認してもらう手続きが別途必要になります(Anerkennung einer ausländischen Entscheidung in Ehesachen nach Art. 7 FamRÄndG)。

自国民を重婚から守るために、「前の結婚及び離婚の記載された戸籍謄本」を要求するのは、当該国として妥当な行為である。このような要求を諸外国はせざるを得ないのである。

その「前の結婚及び離婚の記載された戸籍謄本」は、従前の戸籍であるので、続柄の更正は拒否されるのである。その上、婚外子については、同一人であるにも拘わらず、続柄の記載が戸籍によって異なる記載がされているので、同一人であることの確認について、事情に通じていない外国の法務当局を煩わせているのである。

今日、離婚、再婚は増加し、またもとよりなんらの違法な行為ではない。国際化の進展とともに、外国人との婚姻も珍しいものではなくなった。ところが、婚外子が適法な婚姻をしようとすると、差別続柄が記載された戸籍を要求されるのである。また、同一人であるのに、続柄記載が異なる理由についての説明を求められるなど、精神的苦痛を味あわせられるのである。

婚姻に際して、続柄差別が強行されていることは、準備書面(1)23〜24頁に、以下のように記述している通りである。

戸籍続柄は単に戸籍に記載されるだけでなく、続柄そのものの記載を公的書類等に要求されるものである。

婚姻届に父母欄・続柄欄を設けているので、婚外子については続柄差別記載があることによって、婚姻の成立の条件が憲法24条のいう「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」することはなく、「差別のある社会的身分であることをあからさまにする」ことなしに成立しない。すなわち、続柄差別記載の結果、婚外子については、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」しないのである。婚姻するのは本人であって父母ではないので、婚姻届けに父母欄・続柄欄は必須であるとは思えない。しかし、現状はこれらの記載を求めているばかりでなく、日常的に認識されているように「長男・長女」式に書けば「長・二」等を赤ペンで×で消すことを婚外子は衆人環視の中、自治体の窓口で強要されてきた。
このように、続柄差別記載は結果として憲法24条に違反し、法律婚を疎外している。法律婚の成立時に婚外子を侮辱することが「法律上の婚姻によって成立した利益に対する保護を優先する」ことに合致するはずもない。

続柄が更正されていない婚外子については、同様のことが今日も窓口で行われている怖れがあるのである。

そもそも、日本国憲法においては、個人を社会的身分によって別扱いすることは、明文で禁止されているので、婚外子続柄差別記載には違憲の推定が働くのである。まして、戸籍続柄差別によって社会的差別が助長されるという具体的不利益を婚外子は被ってきたのである。

それでもなお国側が、従前の戸籍の婚外子続柄差別記載を維持する行政裁量を行うのであれば、当然にもその行政裁量が憲法に違反しないことの立証責任は被控訴人国らにある。

いわゆる戸籍続柄裁判の2004年3月2日を受けて、「戸籍の記載・婚外子差別はやめよう」と題する、2004年3月7日の朝日新聞社説において、以下のように述べている。(甲第26号証)
 
戸籍の記載・婚外子差別はやめよう

他人はふだん気にとめないが、本人にとっては苦痛でたまらないことがある。戸籍の続き柄欄の記載がその一つだ。
 婚姻届を出した夫婦の間に生まれた子どもの場合、続き柄欄に「長男」や「長女」と記載される。ところが、婚姻届を出していない男女から生まれた非嫡出子は「男」や「女」と記される。だから、嫡出子かどうかがひと目で分かる。この仕組みが、進学や就職、結婚といった人生の節目で婚外子に対するいわれなき差別を生む原因の一つとなってきた。

婚外子は、戸籍における続柄差別記載によって、「この仕組みが、進学や就職、結婚といった人生の節目で婚外子に対するいわれなき差別を生む原因の一つとなってきた。」とする。婚外子は、婚外子続柄差別記載によって、「進学や就職、結婚といった人生の節目で婚外子に対するいわれなき差別」を被ってきたのである。

これは、憲法第13条が保障する、幸福追求権の侵害である。同志社大学法学部釜田泰介教授が「嫡出・非嫡出区分の憲法適合性」で論じられたように、憲法13条の個人尊重の原則、14条平等の原則違反であるばかりではなく、憲法第13条幸福追求権の尊重にも違反している。すなわち、婚外子の関連する戸籍に続柄差別記載を今後も維持することには、違憲の推定が働くのである。

よって、被控訴人国らは、婚外子の関連する戸籍に続柄差別記載を今後も維持しようとするのであれば、それが憲法の明文規定に違反することが推定されるから、違憲でないことを立証する責任を負うものである。

求釈明

1.従前の戸籍の差別続柄の更正を拒否することによって達成しようとする重要法益を明らかにせよ。

2.その重要法益を達成する上で、従前の戸籍の差別続柄を維持することが必要不可欠であることを立証せよ。
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2007 / 03 / 24 ( Sat )
第三 自己情報コントロール権と期待権

いわゆる住基ネット大阪高裁判決(平成16年(ネ)第1089号 損害賠償請求控訴事件判決)は、プライバシー権を憲法13条により保障されている権利とした上で、「みだりに自己の情報を収集、利用、提供をされない権利」(自己情報コントロール権)をも含む権利であるとし、住基ネットが個人の私生活の平穏を脅かし、自己情報コントロール権を侵害するおそれがあるとして、違憲判決を下した。

この自己情報コントロール権は、憲法13条により保障されるプライバシー権を構成する重要な権利として、近年判例上も定着して来ている。

東京都教育委員会が都議に開示した文書でプライバシーを侵害されたとして、元教諭が、都を相手に損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決(平成19年2月15日平成18年(ネ)第3844号 損害賠償請求控訴事件 原審東京地裁平成15年(ワ)第26152号)においても、元教諭の主張が認められた。判決は、プライバシーについて、「プライバシーは狭い私生活情報」に とどまるものでなく、「伝統的,消極的意味におけるプライバシーの権利を保護するとともに、さらに、自己の個人情報の開示および訂正を請求する権利を保護することにより、積極的に自己の個人情報に関与するいわゆる現代的、積極的意味におけるプライバシーの権利の保護を目指したものである」とした。その上で、本人の生年月日等の私生活上の情報を法的保護の対象となるとし、「都議会という公益目的を考慮しても、プライバシー侵害に当たる」として、損害賠償請求を認めた。

では、婚外子続柄差別はどうか。本件一審判決も認めるように、婚外子であることは、プライバシーを「狭い私生活情報」と解しても、個人のプライバシーである。

「コメント:婚外子戸籍記載変更請求事件」(国際人権十七号 2006年 大阪大学法科大学院教授 棟居快行)(甲第48号証)によれば、従来、プライバシーについては、「私生活をみだりに公開されないという法的保護ないしは権利」とし、「いわゆる宴の後事件」(昭和39年9月28日下民集15卷9号)による判断が知られているとする。

1. 私生活上の事実、又はそれらしく受け取られるおそれのある事柄
2. 一般人の感受性を基準に当該私人の立場にたった場合に公開を欲しないであろうと認められる事柄
3. 一般の人にいまだに知られていない事柄

の三要件を掲げ、それは現在も広く支持されているとする。
この三要件に照らせば、婚外子続柄差別記載がプライバシー権の侵害となるのは明らかである。そもそも続柄差別記載は、当該私人が婚外子であるか否かを、戸籍を一見すれば明瞭に明らかにするために、法の明文による規定がないのに、法務省が規則のひな形で定めたものである。(法は父母との続柄を記載することを求めているが、婚外子について異なる続柄記載をすることを求めていない。)被控訴人国らによる、意図的なプライバシー権の侵害が、婚外子に対して、一貫して継続的に行われてきたと評価すべきである。

自己情報コントロール権については、どうだろうか。人格的自立にとって本質的に重要な意味を持つ情報については、個人が自己の情報の開示請求や削除請求などのコントロール権を持つことを自己情報コントロール権という。

申し出による婚外子差別続柄の更正は、自己情報コントロール権の行使として、捉えることができる。当該私人の自己情報コントロール権は、当該私人の関連する全ての戸籍に及ぶのは、当然である。

現行の除籍されていない戸籍以外の続柄の更正を拒否するのは、古典的プライバシー権の侵害であるばかりではなく、「自己の個人情報の開示および訂正を請求する権利を保護することにより、積極的に自己の個人情報に関与するいわゆる現代的、積極的意味におけるプライバシーの権利」としての、自己情報コントロール権の侵害である。

法務省ホームページ上の平成16年3月9日(火)野沢法務大臣(当時)閣議後記者会見の概要で明らかなように「人権の基本に立って」議論をすすめた結果、婚外子に対する「差別があってはならない」 ので、「男・女」という雛形が削除されたのである。

平成16年3月9日(火)野沢法務大臣閣議後記者会見の概要は以下のとおりである。
Q:変えることを決めたということでよろしいでしょうか。
A:昨日の決算委員会での答弁どおり,その方向で検討するということです。

Q:具体的には,国会のどこの場で議論することになりますか。
A:規則ですので,法務省だけでできます。

Q:そういう方向性を決めるに至った理由について,大臣はどのように考えていらっしゃいますか。
A:これは,国民の皆様からの御要請が第一にありますし,人権といいますか,生まれた子供たちにはいずれも差別があってはならないわけですから,その基本に立って議論を進めたということです。それから,国際的にも差別をしていないところが段々多くなっているということもございます。
このように担当大臣が、「人権の基本に立って」、「生まれた子供たちにはいずれも差別があってはならない」として続柄差別記載の撤廃を行うとしたので、控訴人はプライバシー権等が回復されると期待したのである。そして、期待権、信頼利益は法的保護の対象である。

NHKの番組が放送直前に改変されたとして、取材を受けた市民団体バウネットがNHKなどに損害賠償を求めたいわゆるNHK番組改変事件の控訴審判決平成16年(ネ)第2039号 損害賠償請求控訴事件 原審 東京地方裁判所 平成13年(ワ)第15454号)は、期待権すなわち信頼利益が侵害されたとして、損害賠償を認めた。

判決では、「ニュース番組とは異なり、本件のようなドキュメンタリー番組又は教養番組においては、取材対象となった事実がどの範囲でどのように取り上げられるか、取材対象者の意見や活動がどのように反映されるかは取材される者の重大関心事であることから……中略……取材者の言動等により取材対象者がそのような期待を抱く……中略……取材対象者の番組内容に対する期待と信頼が法的に保護されるべきものと評価すべきである。」とした。

すなわち、市民団体バウネットが、重大な関心を抱くドキュメンタリー番組の内容が、「取材者の言動等により取材対象者がそのような期待を抱く」ような内容の番組として放映されなかったことを、「取材対象者の番組内容に対する期待と信頼が法的に保護されるべきものと評価すべきである。」として損害賠償請求を認めたのである。

これを本件について見てみるとどうなるのか。
当然にも、続柄差別記載の撤廃は、控訴人にとって重大な関心事である。担当大臣の「人権の基本に立って」、「生まれた子供たちにはいずれも差別があってはならない」という記者会見における言動は、「取材者の言動等」に相当する。担当大臣の言葉通りに、「人権の基本に立って」、「生まれた子供たちにはいずれも差別があってはならない」という言葉に相応しい方法で続柄差別撤廃が行われてプライバシー権等が回復することを控訴人が期待するのは極めて自然である。自己の関連する戸籍に続柄差別が今後も維持されるという内容の通達が発出されることなど、全く予想外であった。

申し出をしても、続柄が更正されず、差別を維持するとし、今後も婚外子の人権を侵害し続ける通達を発出することは、期待権すなわち信頼利益の侵害である。
ようやく政府が立憲主義の本旨に立って、憲法に定められた差別の禁止に従う行政を行うであろうという、すなわち日本国が民主主義国家であるという信頼が失われたのである。

それを失わせた理由が、公務員の事務負担を軽減するためというのであれば、およそ日本国の行政は基本的人権の尊重を理念としているとは言えない。失われた期待権すなわち信頼利益は、日本国では近代民主主義国家としての行政が行われていないという事実である。

続柄差別を維持するという通達を発出することは、婚外子の「人権の基本に立って」行政裁量を行わないとし、今後も行政による婚外子に対する人権侵害を継続するという宣言にほかならない。このような通達を発出することは、期待権すなわち信頼利益の侵害である。

担当大臣が言明した「人権の基本に立って」、「生まれた子供たちにはいずれも差別があってはならない」という言葉に反し、ひいては憲法に謳われた基本的人権の尊重という理念に反する通達を発出することは、期待権すなわち信頼利益の侵害に他ならない。

このような通達の発出は、行政があくまでも婚外子差別を当然視するからできるのである。控訴人は、この通達によって甚大な精神的苦痛を被ったのである。

婚外子の関連する戸籍に続柄差別を維持することは、古典的プライバシー権の侵害であるばかりでなく、自己情報コントロール権の侵害である。また、期待権すなわち信頼利益の侵害に他ならない。

裁判所は、プライバシー権の侵害と期待権すなわち信頼利益の侵害を認めて、謝罪と損害賠償請求を認める判決を下されるよう求めるものである。
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2007 / 03 / 24 ( Sat )
第四 戸籍事務について

控訴人は平成19年1月12日に、被控訴人国らに以下の当事者照会を行った。

被控訴人国らは、平成16年11月1日から平成17年3月31日に約4000件の婚外子の続柄が更正されたとしている。その後、平成17年3月31日から平成18年3月31日までに婚外子の続柄が更正された件数を回答されたい。また、平成18年3月31日から平成18年9月31日までに婚外子の続柄が更正された件数を回答されたい。それ以後についても、月毎の件数など知るところがあれば回答されたい。

これに対して、被控訴人国らから、1月24日に、「平成17年4月1日から平成18年3月31日までの全国における続柄記載更正申出件数は、約5.200件である。」とする回答があった。ところが控訴人は、平成18年11月14日にいわゆる戸籍続柄裁判の原告らが法務省と交渉を行った際に、法務省から同時期の申出件数を4556件と回答されたということを知った。

そこで、2月5日に、改めて以下の当事者照会を行った。

平成19年1月24日の回答によると、「平成17年4月1日から平成18年3月31日までの全国における続柄記載更正申出件数は、約5.200件である。」としている。ところが、平成18年11月14日にいわゆる戸籍続柄裁判の原告らと交渉を行った際の記録によれば、同時期の申出件数を4556件としている。
どちらが、正しい数か答えられたい。

被控訴人国らから、2月16日に以下の回答があった。

平成17年4月1日から平成18年3月31日までの全国における続柄記載更正申出件数は5258件、本籍地市町村への送付分を除いた件数は4566件である。詳細は、株式会社テイハン発行の戸籍第794号に掲載されている。

なぜ、最初からこのように答えないのか、実に不思議である。封建領主の「知らしむべからず、寄らしむべし」に相当する、独善的態度というほかない。

そして、被控訴人各自治体毎の申し出件数についての当事者照会には、2月5日、16日の二度にわたり回答を拒否している。各自治体毎の集計が全国の件数になるのであろうから、簡単にわかるはずであり、秘匿する理由もないはずである。

なお、平成16年11月1日から平成17年3月31日の続柄記載更正申出件数は約4000件ではなく、戸籍第780号の記載によると4000件丁度であり、本籍地市町村への送付分を除いた件数は3750件である。

当事者照会新設時に改正された民事訴訟法(裁判所及び当事者の責務)第2条 「裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。」に照らしても疑問とするところである。

このような被控訴人国らの、独善的態度は戸籍事務においても見られる。あくまでも続柄において、婚外子差別を維持しようとする行政の姿勢として、準正子の続柄記載においても現れている。婚外子の続柄を「男・女」式から「長男・長女」式に更正した後に、父母の婚姻等によって子が準正された時の戸籍において続柄はどのように記載されるのか。

未婚で出産した母の男児として最初の子の続柄を「男」から「長男」に更正したのちに、その子が準正されても、夫婦の最初の男子であるので、続柄は同じく「長男」である。

「戸籍時報表No.599 平成18年6月」(甲第49号証)によると、同じく「長男」であるにも関わらず、戸籍事務においては「長男」に訂正線を引いて、新たにもう一度「長男」と書き直すとしている。しかも、戸籍の再製を許さず訂正線を引いた「長男」はそのまま残すという。婚外子としての父母との続柄である「長男」を、嫡出子としての父母との続柄である「長男」に記載を改めるからであるとしている。しかしながら、戸籍法に定められているのは、全ての子についての父母との続柄を記載することであって、嫡出か否かで続柄の概念が異なるということなどは定めてはいない。すなわち、行政裁量による戸籍記載の方法を各自治体で行わせることで、新しい法概念を創設するという、立法権の侵害を行っているのである。

また、「長男」に訂正線を引いて、新たにもう一度「長男」と書き直すことは、全く無意味である。戸籍事務負担を増大させるだけの煩雑な事務を行うことは、「自分はこんなにも煩雑な事務に精通している。」という自己満足を行政職員に抱かせる以外には、何の役にも立たない。自己の戸籍の続柄欄に、訂正線を引かれて新たに書き直されて、しかも戸籍が再製されないことを喜ぶ国民などいるはずもないことを、公務員は忖度することすらできなくなっている。憲法第15条2に謳われている、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」ことは、全く省みられていない。

戸籍の再製が認められた経緯は、「読売新聞 - 2004年9月21日 」 (甲第50号証)に報道されている。

非嫡出子「続き柄」、戸籍に訂正跡残さず 法務省方針プライバシー配慮

 法務省は20日、法律上の結婚をしていない両親の子供(非嫡出子)について、両親らが続き柄の書き換えを申し出た場合、訂正跡を残さない形で修正する方針を固めた。政府部内で「一目で出生状況がわかる訂正では意味がない」との意見が出ているためだ。

 現行の戸籍では、非嫡出子は「男」「女」と表記されている。同省は10月にも、非嫡出子の戸籍の続き柄欄に嫡出子と同様、「長男」「長女」などと記載するよう戸籍法施行規則を改正することにしている。これに合わせて、全国の法務局などに書き換えの方法を示す通達を送る。

 非嫡出子の戸籍上の表記をめぐっては、東京地裁が今年3月、現行の記載方法はプライバシーの侵害にあたると認定したため、野沢法相は施行規則を改正する方針を表明した。人口動態調査によると、2003年に生まれた非嫡出子の割合は1・9%で増加傾向にある。施行規則改正の背景には、非嫡出子の法的な扱いを嫡出子と同等にすべきだとの考え方の広がりがある。

 施行規則が改正されれば、すでに「男」「女」と記載されている非嫡出子でも、記載を訂正することができる。しかし、両親が「長男」などへの訂正を求めた場合、「男」の部分に朱線が引かれ、訂正理由も書き込まれるなどの問題点が指摘されていた。

 法務省は戸籍法で定めている「戸籍簿の再製」の規定を準用し、申し出があれば、痕跡が残らない形で書き換えに応じることにした。

 「戸籍簿の再製」の要件について、戸籍法は〈1〉虚偽の届け出〈2〉錯誤による届け出〈3〉市町村長の過誤――による記載の訂正について再製の申し出があった場合に限定している。今回、法務省は法改正はせず、「プライバシーへの配慮」に関する通達を出すことにした。

 非嫡出子の続き柄表記を巡っては、1991年2月に社会保険庁が保険証の表記を「子」に統一、95年3月には住民票の表記も「子」に統一された。
「読売新聞 - 2004年9月21日 」

それでは、準正された婚外子の戸籍に、「長男」に訂正線を引いて、新たにもう一度「長男」と書き記し再製を許さないことは、もともとは婚外子である準正子に対して「プライバシーへの配慮」に欠ける戸籍事務を行うことである。ここにも、婚外子がどのような不利益を被っても当然であるとする、行政の婚外子に対する差別意識の強烈さを見ることができるのである。

「長男」に訂正線を引いて、新たにもう一度「長男」と書き記すなどは、徒に戸籍事務を繁雑にし、事務量を膨大にするだけである。パブリックコメントで圧倒的多数をしめた意見を採用し、続柄記載を「男・女」に統一していれば、このような異様異常な戸籍事務を行わなくてもよかったのである。

行政による立法は、準備書面(4)9〜10頁においてもみることができる。

明治政府は1873(明治6)年1月18日に太政官布告第二十一号「妻妾に非ざる婦女にして分娩する児子は一切私生を以て論じ其婦女の引き受けべき事、但男子より己れの子と見留め候上は婦女住所の戸長に請て免許を得候者は其子其男子を父とするを可得事」(甲第42号証)を公布し、私生子の出生は母の戸籍に入籍する形式で行うこととなった。次いで、明治政府は私生子の出生を母の戸籍に記載する目的を、1876(明治9)年12月26日大久保利通伺(甲第43号証104〜105頁)と、1877(明治10)年2月2日太政官指令(甲第44号証)によって明らかにした。

ある戸籍の記載の仕方についての「伺い」に対して「指令」が下されて、その「指令」に従って全国で統一的な戸籍記載を行っていたのである。戸籍事務の手続きを統一することによって、事実上の立法作用が醸成されていたのである。こうして、本来民法上の身分であるはずの私生子という概念を、行政が立法することなしに創り出したのである。こうして行政の、立法と司法に対する優越性が明治初期に成立し、今に続いているのである。

戸籍第777号(平成17年10月)(甲第51号証)における、法務省民事局民事第一課清水真琴による記述によれば、平成11年(ワ)第26105号 東京地方裁判所平成16年3月2日判決で、婚外子であることが「一見して明瞭に判別される現行の父母との続柄の記載は、戸籍制度の目的との関連で必要性の程度を越えており、プライバシー権を害しているものといわざるを得ない。」との指摘されたことで、続柄差別を改めたとする。その上で、対象を現行の除籍されていない現行の戸籍に限った理由を、「市町村区の事務負担が考慮されたから」であるとする。

第3008号通達が、憲法第13条に由来するプライバシー権より、公務員の事務負担への配慮を上位価値としたものであることがあからさまに記述されている。
憲法第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
は、全く省みられることはなかった。

公務員の事務負担への配慮を優先したがために、準備書面(2)17〜18頁で詳述したように、婚外子の現行の戸籍謄本に差別続柄が維持されるという事態すら招いたのである。

では、憲法にすら優越して懸念された「事務負担」は、実際のところ、どれほどのものであったのか。平成16年11月1日から平成17年3月31日の五ヶ月間の、続柄記載更正申出件数が4000件であり、平成17年4月1日から平成18年3月31日までの一年間の続柄記載更正申出件数は5258件である。2年目の申し出は初年度に比して約55%にしかすぎない。平成16年11月1日以降は差別記載が新たにされることはないので、年々「事務負担」が顕著に軽減されるであろうことは、容易に予測できる。

そもそも、公務員の「事務負担」の軽減を国民の人権に優先させて、法的根拠の失われた差別続柄を維持する通達を発出することは違法であり、国家賠償責任法による損害賠償の対象である。

求釈明
5.2004(平成16)年11月1日以降民法の規定に関わりなく続柄差別記載の根拠とされた雛形は消除されている。それでは、婚外子の関連する戸籍に続柄差別記載を維持する法的根拠を具体的に条文等を挙げて答えよ。
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