上告理由書
2007 / 11 / 04 ( Sun )
(3)条約締結国としての義務を果たさないことは憲法違反だ。

 婚外子に対する法制度上の差別はあらゆる形態の差別に包摂されて、人権侵害であるとして一切許されないことは、歴史的にも世界的にも確定している。だからこそ、あくまでも婚外子差別を正当化しようとする被上告人国に対して、繰り替えし勧告を下し、締結した条約を遵守することを求めている。平成17年11月 18日付け準備書面(2)89〜102頁に詳述したところである。

国際人権自由権規約 (日本国報告書審査1993年)
C.主な懸念事項及び勧告
11.当委員会は、婚外子に関する差別的な法規定に対して、特に懸念を有するものである。特に、出生届及び戸籍に関する法規定と実務慣行は、規約第17条及び第24条に違反するものである。婚外子の相続権上の差別は、規約第26条と矛盾するものである。
E.提言と勧告
  17.また、当委員会は、規約第2条、第24条及び第26条の規定に一致するように、婚外子に関する日本の法律が改正され、そこに規定されている差別的な条項が削除されるよう勧告する。日本に未だに存続しているすべての差別的な法律や取扱いは、規約第2条、第3条及び第26条に適合するように、廃止されなければならない。日本政府は、このことについて、世論に影響を及ぼすように努力しなければならない。

国連子どもの権利委員会 第18会期(1998年)
国連・子どもの権利委員会の総括所見:日本(第1回)
C.主な懸念事項
14.委員会は、法律が、条約により規定された全ての理由に基づく差別、特に出生、言語及び障害に関する差別から児童を保護していないことを懸念する。委員会は、嫡出でない子の相続権が嫡出子の相続権の半分となることを規定している民法第900条第4項のように、差別を明示的に許容している法律条項、及び、公的文書における嫡出でない出生の記載について特に懸念する。委員会は、また、男児(18歳)とは異なる女児の婚姻最低年齢(16歳)を規定している民法の条項を懸念する。

社会権規約委員会・総括所見:日本第2回(2001年8月)
規約第16条および第17条にもとづく、締約国が提出した報告書の検討
経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の総括所見:日本
C.主要な懸念事項
14.委員会はまた、とくに相続権および国籍の権利の制限との関連で、婚外子に対する法的、社会的および制度的差別が根強く残っていることも懸念する。
E.提案および勧告
41.委員会は、締約国に対し、近代社会では受け入れられない「非嫡出子」という概念を法律および慣行から取り除くこと、婚外子に対するあらゆる形態の差別を解消するために緊急に立法上および行政上の措置をとること、さらに当事者の規約上の権利(第2条2項および第10条)を回復することを促す。

国連・子どもの権利委員会の総括所見 日本国審査(第2回)2004年
C.主要な懸念領域および勧告
3.一般原則 差別の禁止
25.委員会は、締約国が、とくに相続ならびに市民権および出生登録に関わるあらゆる婚外子差別ならびに「嫡出でない」といった差別的用語を法令から除くために法律を改正するよう勧告する。

国連女子差別撤廃委員会 第29回会期
日本国報告・審査(2003年)
35.委員会は、民法が、婚姻最低年齢、離婚後の女性の再婚禁止期間、夫婦の氏の選択などに関する、差別的な規定を依然として含んでいることに懸念を表明する。委員会は、また、戸籍、相続権に関する法や行政措置における婚外子に対する差別及びその結果としての女性への重大な影響に懸念を有する。

 国内法を条約に適合させるのは、被上告人国の責務である。

第98条 2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

国際人権自由権規約 (日本国報告書審査1993年) において、「日本政府は、このこと(婚外子差別)について、世論に影響を及ぼすように努力しなければならない。」と勧告されているが、被上告人国は婚外子についての人権啓発を一切おこなっていない。

 そればかりか、平成6年(1994年)12月の国連総会において決議された「人権教育のための国連10年」(平成7年(1995年)から平成16年(2004年)までの10年間)においても、婚外子差別を取り上げていない。

 これでは被上告人国は、憲法前文に言う「国際社会において、名誉ある地位」を占めることは到底できない。

市民的及び政治的権利に関する国際規約(国際人権自由権規約)第40条1(b)に基づく第5回政府報告(2006年12月)によると、

第26条:法の下の平等
(2)戸籍上の表記
359. 戸籍上の表記の違いについては、民法上、嫡出子と摘出でない子の区別が存在することから、親族関係を登録・公証することを目的とする戸籍において、この区別をそのまま記載しているものであって、不合理な差別とは言えない。
しかし、戸籍の父母との続柄欄の記載方法については、2004(平成16)年3月2日に東京地方裁判所で言い渡された判決(同裁判所1999(平成11)年(ワ)第26105号事件)において、戸籍の父母との続柄欄における嫡出子と嫡出でない子を区別した記載について、プライバシー権との関係で問題を指摘する判断が示された。
この判決の指摘や父母との続柄欄の記載を改めたいとする国民からの要望なども踏まえて、2004(平成16)年11月1日法務省令第76号をもって戸籍法施行規則の一部が改正され、嫡出でない子の戸籍における父母との続柄の記載は、嫡出子と同様とすることとされ、従前の戸籍記載については、当事者の申出に基づいて更正できることとされた。

という記述がなされている。
まるで申し出をすれば続柄差別記載がすべて更正可能であるという誤解を与えかねない記述である。婚外子の関連する戸籍記載の一部についてのみ更正することができるにすぎないにも関わらず、あたかも差別記載の全てを更正することが可能であるかのような誤読を誘い、問題が解消したかのような誤解を生じさせようとしている。

国連に結集する国際社会が条約を締結した被上告人国に求めているのは、
「婚外子に対するあらゆる形態の差別を解消する」ことである。申し出をしてもその申し出をはねつけ、差別記載を維持し続ける被上告人国の態度は人権侵害の回復を求める婚外子当事者を二重に侮辱し、精神的苦痛を与えるものである。

最高裁は、被上告人国の国連をも欺瞞する態度を厳しく断罪し、条約を直接適用して、上告人勝訴の判決を下されることを求めるものである。またそのことで、被上告人国に条約を遵守させることは、司法を司る最高裁の責務である。
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