上告理由書
2007 / 11 / 04 ( Sun ) (4) 婚外子相続分差別規定は憲法に違反するものでないというのは正しい理解か。
最高裁平成7年7月5日大法廷決定については、平成17年11月 18日付けの原告準備書面(2)「第8 判決の理解について その1最高裁平成7年7月5日大法廷決定について(68〜77頁)」と平成18年3月 10日付けの原告準備書面(3)「第4 判決の理解について(22〜29頁)」で詳述している通りである。 すなわち、最高裁平成7年7月5日大法廷決定は、何等積極的に婚外子相続分差別規定を憲法価値にかなう規定として評価していない。立法裁量権の範囲にあるとして、司法消極主義の典型を示したにしかすぎない。基本的人権の尊重を憲法価値とする現行憲法の最大の矛盾である婚外子相続分差別規定を、全く憲法に合致するとすることはできない。「人権の砦」としての最高裁が職務を果たさなかったとする判断は、当時の新聞社社説等に如実に表れている。 主力全国紙の4紙の社説はそろって大法廷決定が婚外子相続分差別を違憲とまでは言えないとしたことに対して、極めて批判的であり、政府に立法による相続差別撤廃を求めている。 (甲第25号証) 朝日新聞社説「民法改正の流れをとめるな」 「現代の人権感覚に照らすと、最高裁の判断が妥当といえるか、疑問を感じざるをえない。」 「国際人権規約B規約は出生による差別を禁じており、国連規約人権委員会が、日本政府に法改正を勧告している。」 「「合憲」の結論だけが独り歩きして、法改正にブレーキをかけるような動きに利用されるようなことは、あってはならない。」 毎日新聞「残念な最高裁の消極主義」 「これに(差別是正論議)水を差すものであり、最高裁に付いて回る「司法消極主義」の批判は今回も免れそうにない。」 「国連人権委員会で一昨年(1993年)10月、わが国は格差を指摘され「相続権の差別は人権規約に反する。改正に向け世論を変えるのが日本政府の義務である」とまで勧告されている。大法廷の合憲判断に寄り掛かることなく、政府は改正論議を進めなくてはならない。」 読売新聞「時代の流れを映す大法廷判決」 「(違憲五裁判官の論旨は)子どもにとって出生の事情には、何の責任もなく、格差は個人の尊厳に反する。こうした法律上の差別が、社会的にさまざまな偏見を生み出す重要な一因にもなっていると、反論も極めて明快だ。」 「国際人権規約や子供の権利条約も、出生によるいかなる差別も否定している。」 「(民法)改正は単に相続関係だけでなく、現行法に残るさまざまな差別全般の洗い直しを視野に入れなければならない。法律だけにとどまらず、就職や結婚など現実社会での偏見解消を目指す意識改革も必要だ。」 日経新聞「相続差別解消の立法急げ」 「非嫡出子という自分に責任のない理由で不利益な扱いを受けるのは、近代市民社会のルールに反する。」 「日本が批准した国際人権規約や子供の権利条約は、出生による差別を禁止している。」 「民法の相続差別規定が、非嫡出子への差別的な風潮を助長していることも、否定できない。」 「この規定は旧民法の条文がそっくり新民法に引き継がれたものだ。……中略……「個人の尊厳と両性の本質的平等」という憲法の趣旨に立ち戻って、早急に改められるべきである。」 「多数者の横暴から少数者の人権を守るのが最高裁の役割である。憲法の番人として少数者の人権擁護に消極的すぎないか。」 このように、社会の木鐸である新聞によって一斉に批判されたのである。 第151回 - 参議院- 予算委員会 - 10号 2001(平成13)年03月19日 ○大森礼子君 今最高裁の判例でそのような、法律婚を保護するというんですけれども、例えば子どもの権利条約にこう書いてあるんです。「子に関する事項についての親(婚姻をしているかいないかを問わない。)としての同一の権利及び責任。あらゆる場合において、子の利益は至上である。」と。これは婚姻及び家族関係における差別の撤廃のところで、子どもの権利条約十六条で出てきているんです。ここに、婚姻しているかいないかを問わずに子に対して同一の責任があるんだと、親は、ということです。そして、これを子供の側から見るならばと。 親の事情によって差別があるのは、これは耐えがたいことだと思うんです。そういう人権ということを考えるときにはその当事者の側から見るべきだと思うんですね。ですから、最高裁の判例を挙げられたんですけれども、これだってまだ審査を受けたらどうか、文句を言われると多分思うんですけれどもね。 法務大臣としてはお立場があると思いますけれども、このことについて、例えばこれまで民法改正案とか入ってきたわけですね、要綱案の中にも、婚外子差別の撤廃というのは。そうしたら、最高裁と違ったことを今までやろうとしてきたということになるんでしょうか ○ 法務大臣(高村正彦君) 最高裁は違憲ではないということを言ったんで、 どっちがいいかということを言っているわけでは必ずしもないわけで、これは立法政策の話とすればいろいろ考えられると、こういうふうには考えております。 これは、最高裁の決定が「違憲ではない」と言っているが、「合憲である」とも言っていないことを法務大臣自らが認めた答弁である。 しかし、この最高裁平成7年7月5日大法廷決定が立法解決を暗に促すものであったにも関わらず、むしろ立法解決を押しとどめたのである。 そのため終に、最高裁第一小法廷判決 2003(平成15)年03月31日平成14年(オ)第1963号、最高裁第一小法廷判決 2004(平成16)年(オ)第992号(平成16年10月14日)は、 「本件規定が極めて違憲の疑いの濃いものであることに加えて,大法廷決定から約半年後には,法制審議会により非嫡出子の相続分を嫡出子のそれと同等にする旨の民法改正案が答申されていること,今や世界の多くの国において法律上相続分の同等化が図られていること,国際連合の人権委員会が市民的及び政治的権利に関する国際規約40条に基づき我が国から提出された報告に対して示した最終見解においても,相続分の同等化を強く勧告していること等にかんがみ,本件規定については,相続分を同等にする方向での法改正が立法府により可及的速やかになされることを強く期待するものである。」との、付言判決を下さざるを得なくなったのである。 また、最高裁第一小法廷判決 2003(平成15)年03月31日平成14年(オ)第1963号においては、 「日本政府は,国際連合人権委員会に対し,市民的及び政治的権利に関する国際規約40条に基づき「嫡出である子と嫡出でない子の法定相続分を同等化する法改正を検討している。」との報告を提出したが,同10年11月,同委員会は,これに対する最終見解において,日本政府に対し,民法900条4号を含む法律の改正のために必要な措置をとることを勧告するとともに,この点を含む報告の提出日を同14年10月に指定した(なお,同19年7月末日現在,報告は提出されていない。)。」 とあるように、政府は法改正を意図していることを国際社会に表明したのである。 一方、平成17年09月14日 大法廷判決 平成13(行ツ)82、平成13(行ヒ)76、平成13(行ツ)83、平成13(行ヒ)77 在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件によると立法不作為について 「国会が,10年以上の長きにわたって在外選挙制度を何ら創設しないまま放置し,本件選挙において在外国民が投票をすることを認めなかったことについては,やむを得ない事由があったとは到底いうことができない。そうすると,本件改正前の公職選挙法が,本件選挙当時,在外国民であった上告人らの投票を全く認めていなかったことは,憲法15条1項及び3項,43条1項並びに44条ただし書に違反するものであったというべきである。」と述べ、損害賠償請求を認めた。 そうであれば、婚外子相続差別について、1996年の法制審の答申後10年経過しても民法改正がなされなかったので、立法不作為の状態にあると言わねばならない。 そもそも、婚外子相続分差別は昭和22年の民法改正時にも、現行憲法の規定に反することが意識されていたので、衆議院において「可及的すみやかに、見直す。」という附帯決議がなされていたものである。その後、怠慢にも放置されてきたのである。 最高裁自身が、立法解決を強く期待すると言わざるを得ない差別法を、唯一の根拠とする判決を下すことは、法令に解釈適用を誤り、判断遺脱、理由不備の違法があり、かつ、法令の解釈に関する重要な事項を含むので、上告を受理されたい。 社会権規約委員会・総括所見:日本第2回(2001年8月) 規約第16条および第17条にもとづく、締約国が提出した報告書の検討 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の総括所見:日本 E.提案および勧告 35.委員会はまた、締約国が、規約に関する知識、意識および規約の適用を向上させるため、裁判官、検察官および弁護士を対象とした人権教育および人権研修のプログラムを改善するようにも勧告する。 以上のように、原判決が唯一の根拠とした婚外子相続分差別は、最高裁も立法解決を求めるほどの立法不作為の状況にある。また、戸籍記載で婚外子差別記載を行わなくとも、相続は妨げられない。さらには、行政上の必要は全くない。ところが原判決は、公務員の事務量が増大することを理由として、現行の除籍されていない戸籍以外の全ての戸籍に、続柄差別記載を維持し、当事者の本人訴訟において、婚外子の人権を侵害し続ける判断をしたのである。行政の都合を人権の尊重という憲法価値より上位とする、行政に追随する判断は許されない。 |
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