上告受理申立理由書
2007 / 07 / 24 ( Tue )

(2)相続に必要なのは被相続人の戸籍である
 
 原判決は戸籍において婚外子であることを明瞭に記載することが、行政上必要であることを、なんら挙げることができなかった。ただ、相続分差別をいうのみである。

婚外子相続分差別は、親から子への相続で起こるのである。相続の開始には、被相続人の戸籍を死亡時まで全て集めて、相続人を確定するのである。そうであれば、親の戸籍から婚姻歴と子の有無がわかるので、子の戸籍に婚外子であることを記載する必要性はない。婚外子相続分差別は強行規定ではなく、補充規定にしかすぎない。あえて、人権侵害を行い自己の強欲を満たそうとする者の便宜を図る必要はなんらない。
 
一方、戸籍記載において婚外子であることが判明し、深刻な差別を婚外子当事者は被ってきたのである。戸籍法には、婚外子について異なる続柄を記載すべきとする条項はない。ことに、続柄欄は性別欄を兼ねているので、性別を証明する際に必ず求められ、確認するために注視されるのである。

そして、婚外子の続柄が「男・女」とされたのは、かつて戸籍に「私生子男」「庶子女」と記載されていたところ、「私生子・庶子」という記載が子にとって不名誉であるとして、消除されたからである。結果としておよそ続柄を表さない「男・女」としたまま放置したのは、行政の怠慢でしかない。

最高裁第一小法廷判決 2003(平成15)年03月31日平成14年(オ)第1963号において、
「非嫡出子が本件規定によって受ける不利益は,単に相続分が少なくなるという財産上のものにとどまらず,このような規定が存在することによって,非嫡出子であることについて社会から不当に差別的な目で見られ,あるいは見られるのではないかということで,肩身の狭い思いを受けることもあるという精神的な不利益も無視できないものがある。」
と指摘した最たるものが、「男・女」という続柄差別である。
 
婚外子続柄差別記載をプライバシー権の侵害とした、いわゆる戸籍続柄裁判地裁判決について、
憲法に合致せず
成城大学法学部の棟居快行教授の話
「戸籍が非嫡出子であることを殊更に明示することで子への社会的偏見を助長し、親の事実婚に筋違いのペナルティーを科すことは、個人の尊厳を基盤に据える憲法の家族観とも合致せず、行政上の必要性に厳格さを求める意味で、妥当な判決だ。」[朝日新聞2004(平成16)年3月3日社会面(38面)]
と、解説されたように、「行政上の必要性に厳格さを求める」判断をすべきである。

以上のように、原判決が唯一の根拠とした婚外子相続分差別は、最高裁も立法解決を求めるほどの立法不作為の状況にある。また、戸籍記載で婚外子差別記載を行わなくとも、相続は妨げられない。さらには、行政上の必要は全くない。ところが原判決は、公務員の事務量が増大することを理由として、現行の除籍されていない戸籍以外の全ての戸籍に、続柄差別記載を維持し、当事者の本人訴訟において、婚外子の人権を侵害し続ける判断をしたのである。行政の都合を人権の尊重という憲法価値より上位とする、行政に追随する判断は許されない。

このように、原判決には法令に解釈適用を誤り、判断遺脱、理由不備の違法があり、かつ、法令の解釈に関する重要な事項を含むので、上告を受理されたい。

最高裁は、国連からあらゆる形態の婚外子差別の撤廃を強く勧告されていることに鑑み、日本国が国際人権水準にかなう国であることを内外に示すためにも、上告を受理されたい。




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