2017 / 07 / 22 ( Sat )
婚外子相続差別/「決める政治」で解消図れ
              2013年07月30日火曜日 河北新報
 多様な社会生活を保証するためには、いわれなき差別を撤廃しなければならない。出生の形による差別待遇などはもっての外にもかかわらず、現実にはいまだに存在する。
 結婚していない男女間の子ども(婚外子)の法定遺産相続分が、結婚の下で生まれた子ども(婚内子)の半分だという民法の規定はまさに、当事者にとって理不尽な差別に当たる。
 伝統的な家族観を尊重する人たちの中には、同じ扱いこそが不当だという意見があるかもしれない。
 だが、生まれてきた子どもの立場で考えてみればどうだろうか。本人にはもとより何の責任もない。それなのに、法律の規定によってずっと不利益を背負わされるわけだ。
 婚外子の相続差別に対し、最高裁はこの秋にも初めて憲法違反との判断を示すとみられる。
 後に残るのは、民法を改正して相続差別規定を撤廃する政治の取り組みだ。これまでも改正案提出の動きはあったが、改正できないできた。
 「決める政治」に向け国政で安定した政治状況が実現した。もはや先延ばしは許されず、どれだけ短期間に実行できるか、その瞬発力が問われる。
 相続差別は民法900条4号が根拠になる。そのただし書きに「嫡出でない子の相続分は嫡出子の2分の1」と規定されている。1898(明治31)年施行の民法に盛り込まれ、今も引き継がれている。
 法の下の平等(憲法14条)に反するといった批判が絶えなかったが、最高裁は1995年に合憲との判断を示している。
 しかし、最高裁にその後持ち込まれた遺産相続の家事審判がことし2月に小法廷から大法廷に移され、今月10日には弁論も開かれた。大法廷で弁論を開くことは判例変更を意味するため、これまでの見解を見直して違憲判断に転じるとみられる。
 合憲か違憲か憲法判断の分かれ目になるのは、相続分に差をつけることが果たして合理的に認め得るのかどうかだ。差をつける目的は「法律による婚姻の尊重」とみなされているが、家族のありようが時代とともに大きく変わってきている。
 婚姻届の提出にこだわらず生活を共にしたり、新たな家族の形をつくったりする人たちはこれからも増えるだろうし、そうした多様な生き方も同様に尊重していかなければならない。結婚の有無だけで差をつける措置の存続は、説得力に乏しい。
 法律によって生き方の「規範」を示し、そこから外れたケースに不利益を与えているようなものだ。
 政治家にも旧来の家族観に固執する人はいるだろう。だが、法律の名の下で差別的な立場に置かれ、苦しんできた人たちがいるのは紛れもない事実だ。
 最高裁の判断が示された後、政治の場で議論を長引かせるのは決して望ましいあり方ではない。どれだけ素早く是正を図れるか否かは、政治の「質」を推し測る尺度にもなる。

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2017 / 06 / 22 ( Thu )
小社会
2013年09月05日 高知新聞コラム
 直木賞に名を残す作家の直木三十五に、貧乏について書いた一文がある。「僕は、僕の母の胎内にいるとき、お臍の穴から、家の中を覗いてみて、『こいつは、いけねえ』と、思った」。

家が汚く、恐ろしく小さかったのだ。しかし神様からここへ生まれて出ろといわれたのだから、「仕方がない」と覚悟した。そう冗談めかしてはいるが、生まれた家が貧乏だったのは実話だろう。まこと、子どもは親を選べない。

ゆえに戦後憲法は「すべて国民は、法の下に平等」であると定める。それは法律上の夫婦の子(嫡出子)に生まれても、結婚していない男女の子(婚外子)に生まれても同じだ。最高裁がそう判断を変えた。

婚外子の遺産相続分は嫡出子の半分とする民法の規定は、明治民法から受け継がれた。事実婚やシングルマザーなどが増えてきた現代に、子どもには選択の余地のないことで差別するのは明らかに憲法に違反する。最高裁の決定は、むしろ遅すぎるくらいだ。

司法だけでなく立法府たる国会も、「不当な差別」という国内外の声に鈍感だった。婚外子には年少期や結婚の時に悩んだり、肩身の狭い思いをしたり、という人が少なくない。親の死に際しても人を苦しめる不条理を早く正すべきだ。

民法改正の機会は過去にもあったが、それを阻んできた「伝統的な家族観」とは何なのだろう。その「伝統」も時代の波と、憲法の真理にはあらがえない。
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2017 / 05 / 18 ( Thu )
婚外子の差別  立法府こそ解消を急げ  京都新聞 2013年07月11日

 法律的に結婚している夫婦の子(嫡出子)として生まれるか、結婚していない男女の子(婚外子)として生まれるか。子ども自身は決して選べない。にもかかわらず遺産相続を受ける際、婚外子は嫡出子の半分とする民法の規定が、法の下の平等を定めた憲法に違反する差別かどうかが争われた審判の弁論が最高裁大法廷であった。
 大法廷は、憲法判断や判例の変更をする場合に限って開かれる。最高裁は婚外子への差別を合憲だとした従来の判例を見直し、「違憲」と判断するとの見方が広がっている。
 婚外子の相続規定は1898年に明治民法で設けられた。イエ制度に基づく家督相続を前提にした考え方で、戦後の民法にそのまま引き継がれた。
 最高裁は1995年の大法廷決定で「婚外子にも嫡出子の半分の相続分を認めて保護したものであり、不合理な差別とは言えない」として、法律婚を保護する観点から合憲だと初めて判断した。15人の裁判官のうち5人が違憲とする反対意見を述べ、合憲とした裁判官4人が「立法府による解決が望ましい」と補足意見で表明するなど、僅差の合憲判断だった。
 最高裁の弁論は2件の家事審判で行われている。いずれも父親が死亡し、東京都と和歌山県で遺産分割が争われ、それぞれの家裁と高裁が大法廷決定を踏まえて差別規定を合憲と判断したため、婚外子側が特別抗告していた。
 社会情勢が変わり、家族観は多様化している。結婚に対する考え方もまた変化している。
 事実婚やシングルマザーを選択する人の増加に伴い、生まれてくる子どもに占める婚外子の割合が年々高まっている。2011年にはその割合は2・2%で、約2万3千人の婚外子が生まれている。
 婚外子をめぐる差別を撤廃する均等相続は世界の流れでもある。わが国も批准している国際人権規約や子どもの権利条約は、出生などによる差別を明確に禁止している。国際的に批判されていることを忘れてはならない。
 それにしても、立法府としての国会の怠慢が目に余る。
 法務省は、すでに10年に婚外子と嫡出子の遺産相続を平等にする民法改正案をまとめた。しかし、法案の一方の柱だった夫婦別姓導入をめぐって与野党間の意見が対立し、法改正には至っていない。
 最高裁は秋にも決定書面で司法判断を示すが、「違憲」決定を待つまでもなく、国会自身が政治の場で答えを出すべきだ。参院選後に、国会がすみやかに議論を再開することを強く望みたい。
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