2017 / 05 / 18 ( Thu )
婚外子の差別  立法府こそ解消を急げ  京都新聞 2013年07月11日

 法律的に結婚している夫婦の子(嫡出子)として生まれるか、結婚していない男女の子(婚外子)として生まれるか。子ども自身は決して選べない。にもかかわらず遺産相続を受ける際、婚外子は嫡出子の半分とする民法の規定が、法の下の平等を定めた憲法に違反する差別かどうかが争われた審判の弁論が最高裁大法廷であった。
 大法廷は、憲法判断や判例の変更をする場合に限って開かれる。最高裁は婚外子への差別を合憲だとした従来の判例を見直し、「違憲」と判断するとの見方が広がっている。
 婚外子の相続規定は1898年に明治民法で設けられた。イエ制度に基づく家督相続を前提にした考え方で、戦後の民法にそのまま引き継がれた。
 最高裁は1995年の大法廷決定で「婚外子にも嫡出子の半分の相続分を認めて保護したものであり、不合理な差別とは言えない」として、法律婚を保護する観点から合憲だと初めて判断した。15人の裁判官のうち5人が違憲とする反対意見を述べ、合憲とした裁判官4人が「立法府による解決が望ましい」と補足意見で表明するなど、僅差の合憲判断だった。
 最高裁の弁論は2件の家事審判で行われている。いずれも父親が死亡し、東京都と和歌山県で遺産分割が争われ、それぞれの家裁と高裁が大法廷決定を踏まえて差別規定を合憲と判断したため、婚外子側が特別抗告していた。
 社会情勢が変わり、家族観は多様化している。結婚に対する考え方もまた変化している。
 事実婚やシングルマザーを選択する人の増加に伴い、生まれてくる子どもに占める婚外子の割合が年々高まっている。2011年にはその割合は2・2%で、約2万3千人の婚外子が生まれている。
 婚外子をめぐる差別を撤廃する均等相続は世界の流れでもある。わが国も批准している国際人権規約や子どもの権利条約は、出生などによる差別を明確に禁止している。国際的に批判されていることを忘れてはならない。
 それにしても、立法府としての国会の怠慢が目に余る。
 法務省は、すでに10年に婚外子と嫡出子の遺産相続を平等にする民法改正案をまとめた。しかし、法案の一方の柱だった夫婦別姓導入をめぐって与野党間の意見が対立し、法改正には至っていない。
 最高裁は秋にも決定書面で司法判断を示すが、「違憲」決定を待つまでもなく、国会自身が政治の場で答えを出すべきだ。参院選後に、国会がすみやかに議論を再開することを強く望みたい。
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2017 / 04 / 11 ( Tue )
婚外子相続差別、違憲 まだ続く法の下の不平等

2013年9月6日 福井新聞

 生きていれば、時代の流れに左右される。変わらないものがあるとすれば、法の下における平等、個人の尊厳。まして生まれながらの差別は許されない。

 結婚していない男女間の子(婚外子)に対する民法の相続格差規定について、最高裁大法廷が「違憲」の初判断を示した。「合憲」とした1995年判例を裁判官14人全員一致で見直した。政府は早ければ秋の臨時国会で民法改正を目指す。世界の潮流から立ち遅れた不当差別にいち早く終止符を打つべきだ。

 明治民法以来、引き継がれてきた嫡出子と婚外子の格差をどうとらえるか。このルールは、婚外子の遺産相続分を、結婚している夫婦の子である嫡出子の半分に抑えるものだ。

 大法廷の結論は「家族観が変わり、相続分を差別する根拠は失われており、憲法が保障する法の下の平等に反する」と明確に示した。本人の意思や努力とは無関係に、生まれた瞬間決まってしまう「社会的身分」は、戦後、批判がくすぶり続けた規定だ。事実婚やシングルマザーが増え、国民意識も変わった。時代のすう勢を考慮すれば、違憲判断は遅すぎたといえる。

 長く保持し続けた民法規定は「法律婚の尊重と婚外子の保護の調整を図る」としている。95年大法廷の合憲判断も「個人の尊厳」より「法律婚の尊重」を優先させた。ただ裁判官15人のうち5人は違憲の反対意見、合憲とした10人のうち4人も「法改正が適当」などと補足意見を付けていた。その後も小法廷が5回合憲としたが、「合憲の結論を辛うじて維持したとみることができる」状況だった。

 合憲判断当時は、法相の諮問機関である法制審議会で相続差別撤廃の議論が進んでいた。このことが立法府を尊重する「司法消極主義」に陥り、国会も保守系議員の強い反対で動かなかった。結局は三権の怠慢、責任放棄のもたれあいが「時代錯誤」を長期化させたといえる。

 今回の審理対象の相続は、2001年7月と11月に開始された。最高裁は、国連の再三にわたる是正勧告に加え、戸籍の記載などで区別をなくすようになった社会情勢の変化などから、「遅くとも同年7月には規定が違憲だった」とした。ただ「それ以降の解決済みの相続には影響を及ぼさない」とした。混乱を防ぐためだろうが、不公平を温存させた責任は重い。

 相続格差以外にも差別的扱いがある。死別や離婚した母親には税制上の優遇措置が提供されるが、未婚の母には適用されない。これも社会のひずみだ。

 その司法も変わりつつある。5年前には最高裁が、婚外子の国籍取得を困難にする国籍法の規定を違憲と判断。今年3月には東京地裁が知的障害などで成年後見が付いた人の選挙権を奪う公選法の規定を違憲とし、法改正につながった。少数派の権利保護は司法の責務である。

 だが、伝統的日本の家族形態を重視する立場から、今回の判断を批判する声は国民や国会の中にもある。あるべき社会の姿とは何か。平等とは何なのか。家族観や社会観、「家」を考える機会にしなければならない。
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2017 / 03 / 05 ( Sun )
ついになくなるか婚外子差別
2013/3/5 日経新聞 社説春秋

 古くから日本の法律に残る差別がついになくなる。そう期待していいだろう。「婚外子(非嫡出子)の相続分は嫡出子の2分の1とする」という民法900条の規定が法の下の平等を定めた憲法に違反するかどうか、最高裁が大法廷で審理することになった。

 15人の裁判官全員が審理に加わる大法廷は、最高裁が一度出した結論を再検討する必要があるときに開かれる。大法廷は1995年に民法のこの規定を「合憲」とする判断を示した。今回は「違憲」の結論が出る可能性が高い。

 Aさんに子が2人いて、1人は法的な配偶者との子B、もう1人は結婚していない相手との子Cだとする。Aさんが死んだとき、遺産の相続分はCがBの半分になる、というのが民法の規定だ。

 家族はそれぞれである。遺産配分にもそれぞれの事情があろう。それは遺言で指示すればいい。生まれたときの親の立場だけで法が人を差別していいはずはない。

 この規定は、男性が正妻でない女性との間にも子をつくった場合、その子にも相応の相続の権利を認める、という趣旨で明治時代につくられた。

 しかし、当時と今とでは家族や結婚をめぐる環境は大きく変わった。事実婚や国際結婚が増え、戦前の「家」を基本にした家族制度は法的には姿を消している。そうした中で残っているのが婚外子の相続差別なのである。

 この規定をなくすと、家族の結びつきを弱め不倫も助長するという反対意見がある。だが、そもそも「お妾(めかけ)さんの子」を想定してできた規定なのだから説得力はない。むしろ、社会の婚外子に対する有形無形の差別につながる弊害を問題にすべきだろう。

 規定にはかねて批判が多く、最高裁が合憲判決を出した翌年の96年、法制審議会はこの規定をなくす法改正を求める答申を出した。しかし、政府や国会は今まで差別を放置してきた。動かぬ政治の尻を司法がたたくというのは、決して望ましい姿ではない。
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