2017 / 04 / 11 ( Tue )
婚外子相続差別、違憲 まだ続く法の下の不平等

2013年9月6日 福井新聞

 生きていれば、時代の流れに左右される。変わらないものがあるとすれば、法の下における平等、個人の尊厳。まして生まれながらの差別は許されない。

 結婚していない男女間の子(婚外子)に対する民法の相続格差規定について、最高裁大法廷が「違憲」の初判断を示した。「合憲」とした1995年判例を裁判官14人全員一致で見直した。政府は早ければ秋の臨時国会で民法改正を目指す。世界の潮流から立ち遅れた不当差別にいち早く終止符を打つべきだ。

 明治民法以来、引き継がれてきた嫡出子と婚外子の格差をどうとらえるか。このルールは、婚外子の遺産相続分を、結婚している夫婦の子である嫡出子の半分に抑えるものだ。

 大法廷の結論は「家族観が変わり、相続分を差別する根拠は失われており、憲法が保障する法の下の平等に反する」と明確に示した。本人の意思や努力とは無関係に、生まれた瞬間決まってしまう「社会的身分」は、戦後、批判がくすぶり続けた規定だ。事実婚やシングルマザーが増え、国民意識も変わった。時代のすう勢を考慮すれば、違憲判断は遅すぎたといえる。

 長く保持し続けた民法規定は「法律婚の尊重と婚外子の保護の調整を図る」としている。95年大法廷の合憲判断も「個人の尊厳」より「法律婚の尊重」を優先させた。ただ裁判官15人のうち5人は違憲の反対意見、合憲とした10人のうち4人も「法改正が適当」などと補足意見を付けていた。その後も小法廷が5回合憲としたが、「合憲の結論を辛うじて維持したとみることができる」状況だった。

 合憲判断当時は、法相の諮問機関である法制審議会で相続差別撤廃の議論が進んでいた。このことが立法府を尊重する「司法消極主義」に陥り、国会も保守系議員の強い反対で動かなかった。結局は三権の怠慢、責任放棄のもたれあいが「時代錯誤」を長期化させたといえる。

 今回の審理対象の相続は、2001年7月と11月に開始された。最高裁は、国連の再三にわたる是正勧告に加え、戸籍の記載などで区別をなくすようになった社会情勢の変化などから、「遅くとも同年7月には規定が違憲だった」とした。ただ「それ以降の解決済みの相続には影響を及ぼさない」とした。混乱を防ぐためだろうが、不公平を温存させた責任は重い。

 相続格差以外にも差別的扱いがある。死別や離婚した母親には税制上の優遇措置が提供されるが、未婚の母には適用されない。これも社会のひずみだ。

 その司法も変わりつつある。5年前には最高裁が、婚外子の国籍取得を困難にする国籍法の規定を違憲と判断。今年3月には東京地裁が知的障害などで成年後見が付いた人の選挙権を奪う公選法の規定を違憲とし、法改正につながった。少数派の権利保護は司法の責務である。

 だが、伝統的日本の家族形態を重視する立場から、今回の判断を批判する声は国民や国会の中にもある。あるべき社会の姿とは何か。平等とは何なのか。家族観や社会観、「家」を考える機会にしなければならない。
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2017 / 03 / 05 ( Sun )
ついになくなるか婚外子差別
2013/3/5 日経新聞 社説春秋

 古くから日本の法律に残る差別がついになくなる。そう期待していいだろう。「婚外子(非嫡出子)の相続分は嫡出子の2分の1とする」という民法900条の規定が法の下の平等を定めた憲法に違反するかどうか、最高裁が大法廷で審理することになった。

 15人の裁判官全員が審理に加わる大法廷は、最高裁が一度出した結論を再検討する必要があるときに開かれる。大法廷は1995年に民法のこの規定を「合憲」とする判断を示した。今回は「違憲」の結論が出る可能性が高い。

 Aさんに子が2人いて、1人は法的な配偶者との子B、もう1人は結婚していない相手との子Cだとする。Aさんが死んだとき、遺産の相続分はCがBの半分になる、というのが民法の規定だ。

 家族はそれぞれである。遺産配分にもそれぞれの事情があろう。それは遺言で指示すればいい。生まれたときの親の立場だけで法が人を差別していいはずはない。

 この規定は、男性が正妻でない女性との間にも子をつくった場合、その子にも相応の相続の権利を認める、という趣旨で明治時代につくられた。

 しかし、当時と今とでは家族や結婚をめぐる環境は大きく変わった。事実婚や国際結婚が増え、戦前の「家」を基本にした家族制度は法的には姿を消している。そうした中で残っているのが婚外子の相続差別なのである。

 この規定をなくすと、家族の結びつきを弱め不倫も助長するという反対意見がある。だが、そもそも「お妾(めかけ)さんの子」を想定してできた規定なのだから説得力はない。むしろ、社会の婚外子に対する有形無形の差別につながる弊害を問題にすべきだろう。

 規定にはかねて批判が多く、最高裁が合憲判決を出した翌年の96年、法制審議会はこの規定をなくす法改正を求める答申を出した。しかし、政府や国会は今まで差別を放置してきた。動かぬ政治の尻を司法がたたくというのは、決して望ましい姿ではない。
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2017 / 01 / 25 ( Wed )
相続規定違憲 国会の怠慢改正を急げ
2013年9月5日(木) 信濃毎日新聞

 両親が法律上の結婚をしていない子(婚外子)の遺産相続分を、結婚している夫婦の子(嫡出子)の半分とする民法の規定は、法の下の平等を定めた憲法に違反する―。

 婚外子差別の象徴とされてきた問題に対し、最高裁大法廷がきのう、1995年の合憲判断を見直し、違憲とする決定を出した。

 両親の事情によって、生まれてきた子の権利に差が生じるのは不条理だ。明治時代にできた規定は結婚観、家族観が多様化する現代にそぐわなくなっていた。

 96年に政府の法制審議会から見直しを求められていたのに、17年も放置してきた国会の責任は極めて重い。他の民法の課題とともに秋の臨時国会で法改正を実現するよう強く求める。

 この規定は、法律上の結婚を尊重するとの考えに基づいている。近年は結婚を選ばない事実婚やシングルマザーが増加。女性同士のカップルが精子の提供を受け、子を持つ例も出ている。

 2011年に生まれた婚外子は2万3千人で、出生数全体に占める割合は年々高まっている。出生による差別を禁じた国際人権規約に反するとして、国連から再三、是正を求められてもいた。

 95年の合憲判断は、その後も最高裁で踏襲されてきたとはいえ、常に違憲の少数意見が付いていた。高裁でははっきりと違憲とする裁判官もおり、判断の揺れる司法が、国会による立法解決を促してきた経緯がある。

 自公政権時も民主党政権時も改正に向けた動きはあった。が、一部の議員が「家族制度が崩壊する」などと反発し、見送られている。国政選挙の「1票の格差」訴訟に続き、立法府の怠慢を突きつけられる結果を招いた。

 戸籍法の問題も忘れてはならない。出生届に嫡出子か婚外子かの記入を義務付ける規定があり、既に東京地裁が「憲法違反の疑いがある」としている。与野党は、差別を助長するような法規定を洗い出し、同時に改正すべきだ。

 96年の法制審の答申は、夫婦別姓制度を導入すること、女性の再婚禁止期間を現行の6カ月から100日に短縮することも提言している。いずれも若い世代ほど実現を望む声が強い。

 欧米では半世紀も前から嫡出子と婚外子の差別撤廃が進み、少子化対策に結び付いたとの統計もある。日本でも、それぞれの人生観や生活スタイルを認め合う懐の深い社会を目指したい。民法改正はその一歩にすぎない。



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