2017 / 03 / 05 ( Sun )
ついになくなるか婚外子差別
2013/3/5 日経新聞 社説春秋

 古くから日本の法律に残る差別がついになくなる。そう期待していいだろう。「婚外子(非嫡出子)の相続分は嫡出子の2分の1とする」という民法900条の規定が法の下の平等を定めた憲法に違反するかどうか、最高裁が大法廷で審理することになった。

 15人の裁判官全員が審理に加わる大法廷は、最高裁が一度出した結論を再検討する必要があるときに開かれる。大法廷は1995年に民法のこの規定を「合憲」とする判断を示した。今回は「違憲」の結論が出る可能性が高い。

 Aさんに子が2人いて、1人は法的な配偶者との子B、もう1人は結婚していない相手との子Cだとする。Aさんが死んだとき、遺産の相続分はCがBの半分になる、というのが民法の規定だ。

 家族はそれぞれである。遺産配分にもそれぞれの事情があろう。それは遺言で指示すればいい。生まれたときの親の立場だけで法が人を差別していいはずはない。

 この規定は、男性が正妻でない女性との間にも子をつくった場合、その子にも相応の相続の権利を認める、という趣旨で明治時代につくられた。

 しかし、当時と今とでは家族や結婚をめぐる環境は大きく変わった。事実婚や国際結婚が増え、戦前の「家」を基本にした家族制度は法的には姿を消している。そうした中で残っているのが婚外子の相続差別なのである。

 この規定をなくすと、家族の結びつきを弱め不倫も助長するという反対意見がある。だが、そもそも「お妾(めかけ)さんの子」を想定してできた規定なのだから説得力はない。むしろ、社会の婚外子に対する有形無形の差別につながる弊害を問題にすべきだろう。

 規定にはかねて批判が多く、最高裁が合憲判決を出した翌年の96年、法制審議会はこの規定をなくす法改正を求める答申を出した。しかし、政府や国会は今まで差別を放置してきた。動かぬ政治の尻を司法がたたくというのは、決して望ましい姿ではない。
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2017 / 01 / 25 ( Wed )
相続規定違憲 国会の怠慢改正を急げ
2013年9月5日(木) 信濃毎日新聞

 両親が法律上の結婚をしていない子(婚外子)の遺産相続分を、結婚している夫婦の子(嫡出子)の半分とする民法の規定は、法の下の平等を定めた憲法に違反する―。

 婚外子差別の象徴とされてきた問題に対し、最高裁大法廷がきのう、1995年の合憲判断を見直し、違憲とする決定を出した。

 両親の事情によって、生まれてきた子の権利に差が生じるのは不条理だ。明治時代にできた規定は結婚観、家族観が多様化する現代にそぐわなくなっていた。

 96年に政府の法制審議会から見直しを求められていたのに、17年も放置してきた国会の責任は極めて重い。他の民法の課題とともに秋の臨時国会で法改正を実現するよう強く求める。

 この規定は、法律上の結婚を尊重するとの考えに基づいている。近年は結婚を選ばない事実婚やシングルマザーが増加。女性同士のカップルが精子の提供を受け、子を持つ例も出ている。

 2011年に生まれた婚外子は2万3千人で、出生数全体に占める割合は年々高まっている。出生による差別を禁じた国際人権規約に反するとして、国連から再三、是正を求められてもいた。

 95年の合憲判断は、その後も最高裁で踏襲されてきたとはいえ、常に違憲の少数意見が付いていた。高裁でははっきりと違憲とする裁判官もおり、判断の揺れる司法が、国会による立法解決を促してきた経緯がある。

 自公政権時も民主党政権時も改正に向けた動きはあった。が、一部の議員が「家族制度が崩壊する」などと反発し、見送られている。国政選挙の「1票の格差」訴訟に続き、立法府の怠慢を突きつけられる結果を招いた。

 戸籍法の問題も忘れてはならない。出生届に嫡出子か婚外子かの記入を義務付ける規定があり、既に東京地裁が「憲法違反の疑いがある」としている。与野党は、差別を助長するような法規定を洗い出し、同時に改正すべきだ。

 96年の法制審の答申は、夫婦別姓制度を導入すること、女性の再婚禁止期間を現行の6カ月から100日に短縮することも提言している。いずれも若い世代ほど実現を望む声が強い。

 欧米では半世紀も前から嫡出子と婚外子の差別撤廃が進み、少子化対策に結び付いたとの統計もある。日本でも、それぞれの人生観や生活スタイルを認め合う懐の深い社会を目指したい。民法改正はその一歩にすぎない。



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2016 / 12 / 23 ( Fri )
婚外子の相続 問われる政治の不作為
北海道新聞 2013年9月5日
 結婚していない男女間に生まれた婚外子(非嫡出子)の遺産相続分を法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分とする民法の規定は憲法に違反し、無効である。
 相続をめぐる2件の裁判で最高裁大法廷は、こんな決定をした。合憲とした1995年の判例を変更するもので、裁判官14人の全員一致だ。
 2件の裁判のうち、相続財産の持ち主の死亡時期が早い方の2001年7月には、既にこの規定が法の下の平等を定める憲法14条に違反していたと結論づけた。
 理由は「父母が婚姻関係になかったという、子に選択、修正の余地のない理由で不利益を及ぼすのは許されず、個人として尊重し、権利を保障すべきだとの考え方が(社会に)確立されてきている」とした。
 ただ、時代の変化を考えれば当然の判断であり、遅きに失した。政府と国会は重く受け止め、差別規定を速やかに撤廃しなければならない。
 1898年(明治31年)、明治民法に設けられ、戦後の民法に引き継がれた。長年、婚外子差別と批判され、違憲の疑いを指摘されてきた。
 しかも、事実婚や未婚の母が増えるなど家族形態は多様化、家族観は変化した。1995年の合憲判断後、地裁、高裁で違憲判断が相次ぎ、判例見直しは時間の問題だった。
 見過ごせないのは政治の不作為だ。法制審議会は96年、この規定をなくす民法改正要綱を法相に答申したのに、政府は与党内の異論を理由に法案を提出しなかった。
 国会も同罪だ。野党は再三、改正法案を提出したが、廃案となった。
 主要先進国でこんな規定を残すのは日本だけだ。国際社会からも厳しい目を向けられている。
 国連の女性差別撤廃委員会は09年の勧告で、女性差別撤廃条約の締約国として差別規定撤廃の義務があるとした。この指摘の重みをあらためて受け止める必要がある。
 政府は規定撤廃に至らない理由に世論の動向を挙げてきた。確かに内閣府のこれまでの世論調査では撤廃反対が賛成を上回っている。
 婚外子はこの社会では少数派だ。その相続には経済的利害に加え、男女間の複雑な感情も絡む。違憲判断に違和感を覚える人もいるだろう。
 政府には、この規定による差別助長など弊害の大きさについて国民の理解を広める対応も求められる。
 96年の民法改正要綱には夫婦が別姓を選べる制度新設などが盛り込まれていることを忘れてはならない。
 答申から17年の社会の変化に応じた再検討は必要だが、要綱の趣旨を踏まえた法改正は急務である。婚外子の相続差別をなくせば済む問題ではないことを政府は認識すべきだ。
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